身辺雑多 その62

領事館の失態

 全世界に映像が配信されてしまった。
必至に日本領事館に逃げ込もうとする北朝鮮亡命者。
領事館内に侵入して取り押さえる中国警察。
この命がけの攻防の映像の端から領事館員が写ってくる。
たらたら歩いて登場するのだ。
今なお攻防が続いているのに、彼らがやったことは
帽子を拾うこと、そして眺めているだけ・・・。
後でいかに抗議したって、説得力ないね。

 たぶん、こういうのを平和ボケというのだろうと思う。
彼らの様々な権益で保護された生活にどっぷり浸かった日常からは、必死の思いで逃げ込んでくる人がいるなどということに思いが至らないのであろう。また外務省批判が激しくなることは避けられない。いや、鈴木宗男のような、日ロ友好ムードを盛り上げてその陰でちゃっかり甘い汁を吸った(仲間に吸わせた)ような程度の問題ではない。事は国の主権の問題である。折から有事法案の審議中であるが、どんな法律を作ったってダメなものはダメだということを明確に、しかも日本の主権意識の無さを全世界に宣伝したようなものだ。いや、すでに言われていたことを自ら証明して見せたと言うべきかもしれない。

 ただ、事は領事館、外務省を非難すればよいものではない。国民一人一人の問題でもある。仮に私があの領事館職員の一人だったら、中国警察を排除して亡命者を守っただろうか? 自分で考えてみて、ノーである。たぶん、私も他人事のように様子を眺めたであろう。考えるとしたら、この件についてどういう書類を書くかぐらいだったに違いない。今私がこんなふうに書いているのは、道の向かいから、客観的に事態を捕らえた映像を見たからである。

 助けを求める人がいても、ただ眺めているだけ。そんな景色を日常的に目にする時代ではないか。私たちはあまりにも他者の、とりわけ弱者の気持ちを受け取ることから遠ざかっているように思う。そんなことを考えてみると、我が国の平和を守るためには、自分たちが血を流すということを常に覚悟し、備えておかないといけないのかもしれない。(02/05/09)


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